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- 2010/7/2 3:47
- 千の風の風速は異常 (7)
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山本山が立ち上がった
『何でよ!何で小春なのよ!』
真冬は少しの間考え答えた
『多分…光を失ったのだろう』
光を失ったって…
山本山からの手紙が脳裏を過った
早苗が小さな声で言う
『え?じゃあ…春チャンの目が見えなかったのは…』
真冬は早苗を見ると、素早く答えた
『目が見えなかった?やはり光を失っていたのか…お犬様が迎えに来た者は…光を失う。それが天狗となる合図なんだ』
バンッ!
山本山がテーブルを叩いた
『ちょっと待って!小春は大病を患ったから目が見えなくなったはずよ!小春がそう言ってたわ!』
早苗は山本山に顔を向け話した
『私…聞いたよ…春チャンは…大きな病気だって…血が止まらない病気だって…』
山本山は早苗の方へ向き、呆然と立ち尽くし静かに答えた
『血が止まらない病気?…それ…小春は生まれつきの病気よ』
真冬が話しに割って入る
『姉は村へ帰ったら、もう戻れないと知っていた。だから大病という曖昧な言葉で…自分が死ぬ理由付けをしたのだろう』
自分が死ぬ辻褄を合わせたのか
そうまでして…
掟とは…それほどのものなのか?
関根クンが真冬に問い掛けた
『君はwさっきw小春氏は生きていると言ったおwそれに世間的に亡き者と言うことは…』
真冬は次の言葉を待たずに答えた
『そうだ。姉は表向きは死んだ事となっているが、実際は生きている。いや…生かされているはずだ』
早苗が震えた声で聞いた
『どうして?』
真冬が答える
『昔の生け贄は、残酷なものだったらしいが…今は時代が違う。そう…易々と人は殺せない』
早苗が再び聞いた
『…今は?』
真冬は早苗に視線を向け答えた
『水や食事を与えられ…犬神の社の地下に幽閉される。そこで一生を…天狗として過ごす』
関根クンが再び問い掛ける
『出られる事は無いのかおw?』
真冬は、遠い目をして静かに答えた
『…社に幽閉されたが最後…二度と日の光を浴びることは無い』
小春さんと連絡が途絶えて3年…
これが、その空白の3年間の真実なのだとしたら…
俺は甘く考えていたのかも知れない…
生け贄の文化というものを…
不意に、又三郎の言葉が頭を掠めた
『生け贄とは…その時代それが最も進んだ科学だったのだよ』
今居る環境からは、想像も付かない出来事…
まるでリアリティーが無い話…
これが現実なのだとしたら…
あまりにも悲しい結末…
俺は…どうすれば?