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- 2010/6/30 23:30
- ステイルージュの新色 (6)
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真冬が静かに語り始めた
『私達の村は、狼信仰と言うものがあり、大神(オオカミ)村という名も、そこから来ている。狼信仰の中で言う狼とは犬の事だ。その為、犬神の里と言う別名も存在する』
又三郎が言ってた事と同じだ
真冬が続けた
『狼信仰とは、その名の通り犬神を崇める信仰だ。そして、お犬様が迎えに来た者を犬神憑きと呼び、その者は犬神に身を捧げる為に天狗となる』
山本山が小さな声で呟いた
『迎えに来るって…小春の家で見た…あの犬の首が…犬神だったって…こと?』
関根クンが問い掛けた
『そのw天狗って何なのかおw?』
真冬は、関根クンに視線を向け答えた
『天狗とは、お前達が想像している鼻の長い妖怪ではない』
え?違うのか…
真冬が目を細めながら話した
『大神村で言う天狗は、読んで字の如く…天(てん)に使える狗(いぬ)になると言う意味だ』
早苗が聞いた
『天に使える狗って、どういう事?』
真冬は一つ間を置き答えた
『天狗は、村人と犬神を繋ぐ架け橋となる存在。天狗に祈りを捧げる事で、その願いは犬神に届くと信じられている』
そんな話…本当に信じてるのか…
関根クンが聞いた
『小春氏が天狗になったのはw確かなのかおw?』
早苗が震える声で呟いた
『前に…春チャンが言ってた…村に戻って天狗にならなきゃいけないって…』
真冬は関根クンに視線を向け答えた
『間違い無いだろう…犬神憑きとなった者は世間的に亡き者とする為、大きな桜の木の下に人身供犠の墓をというものが建てられる。多分お前達が見た墓もそれだろう』
やっぱり、あの墓は生け贄になった人の墓だったのか…
山本山が声をあらげて言った
『亡き者って…世間的に殺すって…そんなの犯罪じゃない!…警察に言えば…』
山本山の言葉を遮り、真冬が答えた
『無駄だ!駐在も医者も…村人全員がグルなんだ。誰も口を割らない。村の掟とは、法律よりも重いんだ』
馬鹿げてる…
村の掟は人の命よりも重いって言うのか?
命は…何よりも尊いもののはずじゃないのか?
そんな事が、まかり通るなんて…
狂ってる…
真冬は、静かに言った
『姉は既に、世間的には亡き者とされているだろう』
山本山が、声をあらげた
『そんな話…冗談じゃないわ!』
真冬は山本山を見据えると、冷たい口調で言い放った
『それが…天狗となった者の運命…姉が死ななければならなかった理由だ』