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- 2010/6/2 20:01
- 白い日と黒い日 - サイドストーリー
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- 波のように押し寄せる痛みが、彼女を苦しめていた
辺りはすっかり闇に包まれていたが、彼女の大仕事が無事に終えることを祈る祈祷師の歌声が時折家の中まで届いてきた
彼がもうすぐ帰ってくる
この子が無事に生まれたら、どうしても彼に伝えなければならない事があった
───彼の仕事が何であるか?
夜中にうなされる彼を何度も見てきた
何度も仕事について訊ねてみた
その度、元気そうに振舞う彼ではあったが、瞳の奥の光が徐々に鈍くなっていることに気付いていた
やがて村人の一人から彼の仕事を聞きだした…
彼の罪や苦しみ、奪われた数知れない人々の無念
家族のためではあっても許されざることであった
しかし、彼だけに背負わせたくはなかったのだ
この子が生まれたら、罪を償いながら生きていく
それを伝えたかった─────
途方もなく長い時間戦い続けた彼女の元に、微かに泣き声が聞こえてきた
聖水で清められた我が子を抱きかかえながら安堵と嬉しさの中、妙な胸騒ぎを覚えた
この子に授ける名前は、すでに彼と決めていた
シュクル
ありとあらゆるものに感謝して生きて欲しくて決めた名前
彼女は少し誇らしげに微笑むと彼の帰りを待ちわびて眠りについた
外は白々と夜が明けつつあった
- 波のように押し寄せる痛みが、彼女を苦しめていた