空中分解さんとモバ友になろう!
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- 2012/11/4 16:44
- 運勢上昇中
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- 『今日の気になるランキング最下位は……』
キャスターの軽い口調が止まり、重たいテンションに下がる。
『やぎ座のあなた。なすことやること全部最悪。ただし恋愛運が急上昇中。今告白すればひょっとする答えが返ってくるかもしれませんよ』
朝に粘りつく納豆の糸をひっかき回しながら、佳麻(よあさ)は冷めた調子でテレビに釘を打つ。
『ラッキーフードはキュウリだよ』
佳麻は食卓を見つめる。あいにくキュウリの浅漬けなどはなかった。
「いや、キュウリなんて持っていけないし」
学校に持っていくにしろキュウリなんてもってたら心証が悪くなるはずなんだが。みんななぜ、キュウリを素で持ってるか疑問になるだろう。
だが、その日の運の調子は確かに最悪だった。黒猫をみてもいやしないのに、犬の糞を踏んでしまい、園芸の水やりで水を全身に引っかけてしまい、宿題は家に忘れて先生にこっぴどく叱られた。
放課後になると、占いの通りだなとかえり見る自分がいた。
水泳部の傍らを通った。水泳部部長の荒垣が泳いでいた。佳麻の意中の人だった。
ふと調理部が作っていた野菜が目についた。キュウリがあった。まさかとは思いつつもこれまでの的中率から、佳麻は一本だけ拝借するつもりになった。
荒垣は一人で泳いでいて、佳麻はキュウリを持参しながら、プールのヘリに立った。
「……誰だ」
荒垣はすぐに気がついて、プールに足をつける。
「私だよ、佳麻」
「なんだ、冷やかしかよ佳麻。ってなにを手に持ってるんだ?」
「キュウリだよ」
「マジかよ。それ俺にくれないか」
「別にいいよ。キュウリそんなに好きなんだ」
「ああ、マジで好きなんだ」
荒垣はプールから上がって、真顔をする。
「お前だけには言っておきたいことがあるんだ」
佳麻は瞳を揺らす。まさかほんとうに占いの通りになるのか。心の準備がまだ出来ていない。
「いや、待って……」
「実は俺、カッパなんだ」
『本日のニュースです。日本中の至るところでカッパをカミングアウトする現象が起きています』
- 『今日の気になるランキング最下位は……』