まくらの。さんとモバ友になろう!
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- 2011/9/25 12:54
- 今日のジュエルペットおもしろかった
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幼い頃に住んでいた沖縄の家は海から離れた少し高い丘の上にあった。島の人間はみんな高い場所に住んでいる。海の側に住みたがるのは余所者だけだ。みんなは丘の土地を中地や山地と呼んでいたけど、山は山で全くの別物だ。元々島自体が珊瑚の化石が集まってできただけなのだから山はできない。それでもさとうきびはよく育ち、私の家の周りもさとうきび畑だらけだった。隣の家までは数百メートルある。黄緑色のさとうきび畑に浮いた家。静かそうに思われるかもしれないが、さとうきび畑に浮いた色に静けさなどない。さとうきびの鳴き声が喧しくてしかたない。
馬小屋があった。うちの馬小屋も、さとうきび畑に浮いてある。きっと臭いからだ。家の近くに置いていたらあまりの臭さに殺したくなるからだろう。私はどうしてうちの家がこんな臭い動物を買っているのかわからなかった。昔は家畜としてなんかしらの為に飼っていたのだろうけれど、今はそんな様子もない。ただのペットか、それ以下の存在か、惰性。臭いものに人は愛情を注げないのだろう。
私は学校に行くとき、その側をよく通った。少しだけ遠回りになるが、一応生きているかチェックする気持ちで、あまり近づかないように距離を置き(臭いから)遠目に馬を見る。馬は3頭いる。私にはオスとメスの区別はつかないし興味もない。だけど、3頭の区別はつく。たてがみが一番立派なのが馬Aで瞳が一番やる気がないのが馬Bで体が一番小さいのが馬Ω(オメガ)だ。これは名前ではなく、個体識別の為の記号だ。馬に名前などない。
帰り道はたまに、馬小屋の前に座った。朝は大体機嫌が悪いから近付きたくもないが、帰りは臭い匂いが嗅ぎたくなるときがある。人はそれを自虐や自傷という。そしてそれは病み付きになるのだ。
「あんたらはほんまに臭いなぁ」
私は馬に話しかける。馬達は荒い鼻息で応える。私は楽しくて笑う。私は沖縄人であり関西弁使いだ。
「Ω、Ωおいでぇや。餌、あげるし」
私の一番のお気に入りはΩだ。だからΩだけ特別な記号なのだ。私はΩにビスコを差し出す。ビスコは良い子の常備品だ。Ωは他のABとは違いどこか気品がある。鼻息を荒くしないし餌にがっつかない。だから小さいのだきっと。
でも、一番体が綺麗なのだ。
細かい体毛と薄い皮膚のすぐ下の筋肉。体を動かすとその都度蠢く。
たまに、誘われるようにΩの体に触れた。
手がすごく臭くなった。