Re:STANさんとモバ友になろう!
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- 2013/4/7 12:40
- 勝手4(仮)
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- 藪の中。男と立合っていた。既に、対峙している男は手負いだ。
虚を突いて、一度、野太刀で斬っていた。それなりに深い傷だ。男の着物に、赤い染みが滲んでいる。
雄次郎は、静かに息を吐いた。
一度斬りつけたとはいえ、気を緩めるわけにはいかない。むしろ、一撃で仕留めることが出来なかったことが不味い。
わずかに、木漏れ日が差し始めた。
照り返された相手の剣が、白い光を放つ。
その光に、鋭い意志を感じた。
相討ちを狙われている。雄次郎の肌が、にわかに泡立つ。
相討ちを覚悟した相手ほど、厄介なものはない。こちらが斬ったとしても、相手は全霊を以って斬り返してくる。
赤い染みは、徐々に広がってきている。恐らく、このまま対峙していればいつかは果てるだろう。しかし、その前に相手は必ず打ってくる。
つまりは後の太刀。相手が打って来たの合わせて、こちらも打つ。
永い間、立合っていた。いつの間にか、相手の剣を照らしていた木漏れ日も無くなっていた。
不意に、強い気を感じた。打ってくる、思ったときには、既に踏み込んでいた。
誘いだと気づいたのは、相手の左手を斬り落としてからだった。身を寄せて来た相手は、まだ残っている左の腕で、雄次郎の動きを抱くように抑えつけた。
相手の、高く掲げられた剣が振り降ろされる。
そこで、相手の動きは止まった。雄次郎が離れると男の腹からずるずると、腑(はらわた)が落ちた。身を寄せられたとき、咄嗟に相手の小刀を抜きながら斬っていた。
男は、剣を高く掲げたまま、しんでいた。
小刀を手放すと、雄次郎は深く息を吐いた。
藪の中静けさが、鬱陶しかった。
- 藪の中。男と立合っていた。既に、対峙している男は手負いだ。