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    • 2011/8/27 3:57
    • とあるゲームで出てきた話
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  • "アバター"
    • 黒。何もかも塗りつぶしたような漆黒
      そこに言葉が散らばっている
      優しい言葉、難しい言葉、甘い言葉
      キラキラと光る宝石のように転がっている
      残された言葉はあまり無かった
      残された時間はもっと足りなかった
      『樹』は言葉をかき集めながら、必死で空を見上げる
      こんな筈じゃなかったのに。こんな予定は無かったのに
      出せない声で、樹はつぶやいた
      昔、樹は世界の全てを記憶していた。その為に生まれたから
      日光の喜びに震えるように、人々の記憶を集める事に喜びを感じていた。そう思うように感受性をデザインされていた
      樹は長く伸びた枝の先、その葉から記憶を回収していた
      記憶の葉は世界を覆い尽くす程巨大な網だった
      葉脈には言葉が砕かれた光の粒となって流れ、くまなく枝分かれした血管を通りながら記憶プールに流れ込む仕組みになっている
      言葉はやがて群体となり、光の渦が球状の星になっていった
      巨大な星は樹にとって我が子と同じだった

      たとえばこんな記憶

      病に倒れた子がいる。ちいさなちいさな男の子
      その腕は風が吹いただけで折れてしまいそうなほどにやせ衰え、肌は病院の不健康に洗い立てのシーツよりも白かった
      医者達はさじを投げ、両親は泣き惑うばかり
      男の子は世界を諦めていた
      倦怠感にも似た憎悪が心の底にはドップリと溜まっていた
      何度かその黒いモヤモヤを吐き出してみようと思ったが、泣き暴れてもそのモヤモヤは消える事は無かった
      医者も両親も恨んではいなかった。優しかった、というより身体の痛みが酷すぎて他人への感情を持つ事が出来なかったからだが
      男の子には好きな子が居た。その子は日に焼けた肌と鳶色の目を持つ健康的な女の子だった
      自分には無い眩しさに身が焼けるような気持ちになる
      だが、男の子は女の子の顔を見ることが出来ない
      女の子に出会える喜びよりも、自らの醜さを呪う感情で男の子のココロは一杯になっていた
      やがて女の子が来なくなる日が来るだろう
      毎日毎日、その時が来るのを恐れながら暮らしていた
      彼女とまともな会話ひとつする事ないまま
      女の子はやがて来なくなった
      男の子は一人で死んだ
      樹は記憶を掬い上げ、そっとしまいこむ
      ぶら下げるタグには『羨望』と書いておいた

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