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    • 2011/8/9 11:19
    • 東京
    • コメント(3)
    • 閲覧(61)
  • "アバター"
    • 1話

      正に寿司詰め状態の満員電車の中、私は額に汗を滲ませながら思った。
      右手は吊り革を握り、左手はポケットに突っ込んでいる。
      痴漢の冤罪対策みたいなものだ。
      両手は塞がってますよアピール。
      頭のおかしい女に在らぬ疑いをかけられて、私の人生のエンドロールを流される。
      そんな事態は是非とも避けたい。
      電車の揺れに合わせて私の胸の辺りに、知らない若い女の後頭部が度々ぶつかってくる。
      その度に私の鼻に甘い香りが侵入してくる。
      傷んだ金色の長い髪、露出したよく焼けた小麦色の肩。
      後ろ姿だけでどんな人間か想像がつく。年寄りの私の偏見だろうか。
      頭がクラクラする。
      痴漢する人間の気持ちなんてわからない。
      一瞬の気の迷い、一瞬の快楽を追って人生を棒に振る。
      馬鹿馬鹿しい。私たちは動物じゃないんだ。
      仕事や家族など失うものが多すぎる。
      ハイリスクローリターンとはこのことだ。
      痴漢のニュースを目にする度に私は思った。
      今日も暑かったな。
      電車内は汗の匂いや香水、加齢臭などが混じり合い独特な匂いを漂わせていた。
      私が新宿から京王線に乗り、明大前駅を過ぎた辺りだった。
      本当に小さな消えいるような震えた声。
      「やめてください。」
      私の耳に微かに聞こえた。
      私は平凡に今ある、幸せかは分からないが積み上げてきたものを、これからも積み重ねて行くつもりだった。

      2話
      「ここよく来るの?」
      男は顔を私の耳元に近づけてベタな質問を投げ掛けてくる。
      クラブ内ではR&Bやヒッピホップが大音量で響いている。
      坊主頭にサングラスをライドオンさせている、ハンカチがトレードマークの野球選手。みたいな感じ。
      却下。男から投げられたスローボールのような質問は見逃しさせていただこう。
      シカトを続けていると男は舌打ちをし、踊る人々の中に消えて行った。
      私はなにをやってるんだろう。何の目的でここにいるのか分からない。
      知り合いのDJからメールが来て、ただ暇だったから来てみただけ。ただの気まぐれ。
      あんまりうるさい場所は好きじゃないんだよ。やっぱり帰ろ。
      そう思った瞬間。
      「ダレデショウ?」
      私の視界は誰かの手のひらによって遮られた。
      あっ。この手の感じ。
      分かる。
      固いし、冷たい。
      なんかまるでロボットみたい。
      「C3PO!?」私は振り返った。
      そこにはC3POがいた。
      ヨーダもいた。
      ダースベーダーがいっぱい人斬ってる!
      戦争や!またクローン戦争が始まるんや!!

      「節子!これドロップやない!」
      「でも、これ以外と美味いな!」 完

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