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    • 2012/10/9 2:11
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    • 「思い起こしてみれば、母さんに抱き締められたことはあまりなかったなあ」


      相手がこちらを向いた。いつものように興味がある風など一切装いもしない緩慢な動きでもって、だ。しかしながらそういう体が少しでもわかるときに限って、この男は余すことなく話を耳に入れ頭に入れ、ついにはその作業をしながら平行して頭を入れたての中身の解釈にフル稼働させてしまったりする。複数のことを一度にするなんて器用なことができない(時にはひとつのことすらままならない)俺として見れば羨ましいことである。

      「で?」なんて言い出しそうな顔付きで次の言葉を待っているように見える彼と今この場にいない彼の妹は、件の母の親友たちの忘れ形見だ。
      友人や仕事仲間としては一般に定義されるそれらよりもいくらか近しい存在だ。けれども、それなりに長い期間生活を共にしあった仲であっても、その事を知るのにはひどく時間を要したように思う。
      しかし、それはその場に居合わせた誰もが長らく望んでいたであろう瞬間だったのだ。もちろん俺にとっても例外ではなく。

      ただ、そこで俺の立ち位置が少し狂っていたというだけだ。
      「普通」ならば実の母の感情に重きを置くものなのかもしれない。その為にこの悪友を彼女のもとに連れていくのが、息子としての立場なのかもしれなかった。けれども、だ。
      嗚咽をあげた女性のことより、俺には彼女の腕の中の彼の方がずっとずっと大切だ。

      彼が、もはや過去にしか存在することのない両親のことを時折想い耽ることを知っていた。幼い頃に突きつけられた、あまりにも酷な現実の、そのわずかひと欠片ぐらいは知っていると思った。これから積み重ねられることのない思い出を忘れていく恐怖を少しでも想像してみただけで、震えが止まらなくなった。

      俺を嘘の世界から引きずり出してくれた彼に何か出来ることはないだろうかなどと、でしゃばった考えすら持っている。
      そんな時に舞い込んだのが母からの「友達に会わせて」という戯言だ。
      ただの戯言であったのならば、そんな言葉はゴミ箱の中にでも棄てていたに違いない。家との問題がなんとか解決に向かっている今であっても、父のことも、母のことも許す気など毛頭ありはしなかったし、また、自分が犯した大変な勝手を許してもらうつもりもなかった。

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