のりマスターさんとモバ友になろう!
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- 2009/11/17 5:56
- 彼の足音
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カッ。
足音をたてて
彼はドアの前で立ち止まる。
そして隠れる。
そんな小さな冗談は
僕をイラッとさせる。
「入るなら入れよ」
けど彼は入って来ない。
彼は最初の常連。
付き合いは4年にもなる。
彼は優しい。
それが時には優柔不断に映り
僕をイラつかせた。
気持ちのすれ違いが増え、
彼は次第に店に来なくなった。
カッ。
また彼は立ち止まる。
「そういうの嫌なんだ」
しかし彼は入って来ない。
彼は当時、
常連の間でマドンナの
女の子と付き合っていた。
偶然二人に出会った時、
彼は気まずそうだった。
そしてその付き合いは
長くは続かなかった。
カッ。
カッ。
先月の週末の夜、
「店の中に何か居る?」
常連の女の子が聞いてきた。
「どうだろうね…」
曖昧な僕の返事。
3年前、
彼は大学院の卒業記念で
屋久島へ一人旅に出掛けた。
僕は知らなかった。
ちょうどその日に
急に携帯のアドレスを
整理したくなった。
彼のアドレスが目に入った。
「必要無くなった…
消えてしまった…」
僕は何も思わず
消去した。
翌朝の朝刊には
彼の死亡記事が載っていた。
水死だった。
僕が消去した時刻だった…
カッ。
彼はまたやって来た。
そして姿を見せない。
「だから入りなよ…」
彼は何も応えない…
そして僕はドアを開けた。