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- 2015/4/18 21:52
- 【八犬伝を発見伝
犬塚信乃編】70
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- とぼけたことをいいながら、目はぬけぬけと刺すようにけだものじみた宮六の顔をのぞきこむ。さすがに鼻白んで、
[左母二郎か、目の毒なら遠慮はいらぬ、目をつぶって通るがよい]
口では強く出たが、思わず手がゆるんだので、浜路はさっと身をすり抜け、はだしのまま夢中で庭へ飛びおりていた。
[あは、は、殿さま、花が散りましたな]
[つかまえろ、左母二郎]
[いや、落花枝へかえらず、まあ、座敷へおもどりなさいませ。待てば海路のなんとやらということもありますからな]
浜路はそんな言葉さえ耳に入らず、ただ息をはずませて、暗い木の下やみを走りつづけた。
[うう…]
はずかしいし、悔しいし、男にあんなけがらわしいまねをされて乙女心はもう二度と信乃にあわせる顔がないような気がする。
[お兄さま…]
走っているうちに、涙が止めどもなくあふれてきた。
………………
数日たって、やがて土用に近い一日、陣代の下役軍木五倍二が、なんの前触れもなく、突然、蟇六屋敷の玄関をおとずれた。
- とぼけたことをいいながら、目はぬけぬけと刺すようにけだものじみた宮六の顔をのぞきこむ。さすがに鼻白んで、