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- 2015/3/29 16:13
- 【八犬伝を発見伝
犬塚信乃編】68
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- 今宵かぎりの客とはいえ、男の前へ出てなれなれしく酌をしたり、放蕩な左母二郎などと心にもなく並んで客のきげんを取ったり、まるでうかれ女のようなまねをして、もしやお兄さまにあさましいやつとさげすまれでもしたらどうしよう。
ふっとそんなことを考えると、矢も盾もたまらず離れへ飛んでいきたかったが、思いきってそれもできない。
[お兄さま…]
弱い女の身がしみじみと情けなく暗い廊下に立ちつくしていると、乱れた足音が近づいてきた。簸上宮六である。
[おお
ここにいたか]
まさかと思ったから黙って立っている背後から、宮六はあつかましくもふらふらと肩を抱きすくめてきた。
[あっ、なにをあそばすのです
]
びっくりして、身もがきしながらその手を払いのけようとしたが、
[浜路
浜路と申したな。そなたは愛(う)いやつだ。心配するな、おれが花嫁御にしてつかわすぞ]
- 今宵かぎりの客とはいえ、男の前へ出てなれなれしく酌をしたり、放蕩な左母二郎などと心にもなく並んで客のきげんを取ったり、まるでうかれ女のようなまねをして、もしやお兄さまにあさましいやつとさげすまれでもしたらどうしよう。