長太固強♂さんとモバ友になろう!
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- 2009/5/19 11:32
- 生きざま 後編
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- 『女の子を巻き込むな
悪さするんやったら自分らだけでやれ
』
とSの頭をゴツンと殴って奥の部屋にはいっていった。
Sの父ちゃんは怖かった。俺達は自分の親や先生や不良の先輩などは恐れなかったが、Sのとうちゃんだけにはビビってた。
何故だろう。わからない。人間のもつ迫力、威厳、風格、優しさ、全てが他の大人と違ってた気がする。俺達はSのとうちゃんに憧れてたのだろう。
翌日、本屋の前をチャリで通ると いつもの様に店頭のエロ本のコーナーでSの父ちゃんが立ち読みしてる。
昨日の今の事だから俺はそーっと通り過ぎよう
としてたら
『おい つよし』
とSの父ちゃんが呼んでいる。
『はい』
といい、近くにいくと
『えーか つよし 卑怯な奴になるなよ』
彼はそういった。
それから4年後の夏、Sからがあった
『今、おやじが死んだよ』という。
前から聞いてたが、肝臓癌だった。
その2日後の葬式でのことだ。
Sの父ちゃんは小さな運送会社をしていた。
お世辞にも、儲かってたとは言えないだろう。
母親もSが小学生の時からいない。
訳ありらしいが、ここでは触れずにおきたい。
しかし、なんとも凄い数の参列者である。
北は青森から南は九州まで 遠くからわざわさ来てくれてたらしい。
そのほとんどの人がSを探して声をかけていく。
『君が哲さんの息子さんですか。私はあなたのお父さんに 本当に世話になって感謝の言葉もありません』
『何かあったら 私のところに必ず連絡ください力になります』
『あなたのお父さんは本当に立派な方です』
くる人くる人に、そう声を掛けられ。握手され。肩を揺さぶられるSを俺は隣で見てた。
涙が溢れでた。
生きるということは、こういうことなんだ
そう思った。
Sの父ちゃんの生き様は、この葬式にみなでていた。
その人がどう生きたかは、その人が死んだ時にやっとわかるのだ。
Sは財産や土地こそ受け継がなかったが、人間としてどう生きるべきか、という一番大切なことを受け継いだのだ。
人間は2回死ぬらしい。1回目の死は肉体の死。
2回目の死は、その人の話しを誰もしなくなった時に2度目の死が訪れる。
Sの父ちゃんは その2度目の死を迎えることはないだろう。
- 『女の子を巻き込むな