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- 2012/7/2 21:20
- 改札を抜けると、血痕だらけであった。
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- 生ぬるい、錆のやうな香りが鼻腔を擽る。
辺り一面、赤黒い血痕が模様を作り出していた。
人々は、血痕を踏むまいと無駄な努力をしている。
そういえば、僕は卸したてのチャッカブーツを履いている。そう気付いたのは、まだ乾いていない、生々しい斑点を踏んだ後だ。
電車の車内で、ケタタマシイ救急車のサイレンを聞いた。
病院は駅に近い。だから、サイレンを聴くのはそう珍しいことでは無い。その時は電車のスピードだとドップラー効果は大きいな、とか思っていたと思う。
青い制服を着た警官達が、人集りを作っている。その脇では、担架の脚のスチールパイプが、蛍光灯の明かりを受けて鈍く光っている。
何かあった。そう思った。
4年前の秋葉原でも、同じ様なことがあった。救急車のサイレン。血痕。警官。腰をタオルで押さえている人が倒れていた。タオルは血が滲んでいたっけ。
警官の中心に、男がいた。
浅黒い肌をした、喪服のようなスーツを着た男、ネクタイはしていない。年は50代くらいだ。
目を見開いて、警官達に何か怒鳴っている。よく聞き取れない。興奮しているのは分かる。僕の見えた範囲のシャツには、血が付いていなかった。
僕は、そろそろ通学定期が切れる。今日は、更新しなくちゃいけないんだった。
Uターンをして、改札脇の窓口へと向かった。
綺麗だった。
窓口のガラスが、随分と派手に割られている。ボーリングの玉を投げたなら、こんな風になるのかな。窓枠に残ったガラスの鋭利な部分に、べったりと血がついていた。まさか、人がタックルでもしたのかしら?
今日は珍しいものを観たな。
定期は、明日にしよう。
駅からロータリーに出ると、遠くから祭り囃子の音がする。この時期になると、毎年夏祭りの練習が神社で始まるんだよな。
じめりと湿った風が肌を撫でる。遠くから響く夏の足音が、僕の耳には聞こえる。(実話)
- 生ぬるい、錆のやうな香りが鼻腔を擽る。