白米先生さんとモバ友になろう!
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- 2015/8/11 21:55
- 怖い? 話
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- ある晩、仕事で遅くなった日の話だ。
急いでいた僕は、仲間内で「夜は絶対に通ってはいけない」と言われる峠を通ることにした。
呪われた峠と言われるそこは、幾人もの地元の走り屋が命を落としているらしい。
事故を起こした連中には変なものを見たという者まで・・・。
丁度、峠も中腹に差し掛かった頃だった。
ふと、妙な気配を感じた僕はバックミラーをみると、白い人影のようなものが見えたのだ、なんと老婆だった。
白い装束を着た老婆が、髪を振り乱して猛スピードで追いかけて来ていたのだ。
こんな馬鹿な!? 80kmは出ているんだぞ!
そして老婆は悠々と俺の愛車を追い抜いていった…。
調子にのるなババァ!!
俺はアクセルを踏み込んだ。
ババァがぐんぐん近づいて来る。
振り向いて少し驚いたようだったが、ババァもスピードを上げる!
くっ、なんて馬力だ。
俺も全身のアドレナリンを右足に集中させ、更にアクセルを踏み込んだ。
ようやくババァに並んだ。
ババァが俺に勝てると思ったのか。そんな殺気が、俺に悪魔的な発想をさせた…。
そう、幅寄せである。
迫り来るババァの表情は、恐怖に歪んでいた。
するとババァはなんと、俺の車のフロントに飛び乗ったのだ。
それまで出ていた120km/hが相対速度で240km/h。
ババァはカタパルトに弾かれた戦闘機のように跳んでいった。
なんて奴だ。この俺の完敗だ…。
しかしこの先は・・・!
この先こそ、走り屋の志を砕いてきた魔のカーブだったのだ。
既に戦意を喪失していた俺は急ブレーキをかける。
老婆も慌てて止まろうとしたらしく、踵からは火柱と煙が上がり、体は大きく傾いた。
しかしババァについていた加速度を制御することは、最早出来なかった。
その先のガードレールを突き破り、ババァは跳んだ―。
しかしその姿は美しかった。
オリンピック選手が見せるどんな跳躍よりも高く、華麗に。
跳躍は落ちることなく、夜の星空を背景に、どんどんと舞い上がりそして―
スローモーションのように崖下の闇に飲み込まれていた。
後日俺は花束を持ってそのカーブを訪れた。
宵闇に散った、一人の戦友の勇気を称えに・・・。
- ある晩、仕事で遅くなった日の話だ。