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    • 2007/1/7 23:33
    • 『AKIHO-明歩-⑤』
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    • 夕方になっても明歩は帰ってこなかった。
      尋斗は、若干の不安を胸に明歩の携帯を鳴らしてみたが、留守電になっていて繋がらない。
      尋斗は少しいられながら、時計との睨み合いを続けていた。
      結局、明歩が帰って来たのは夜の10時を回っていた。
      「ただいま。仕事してきちゃった」
      明歩は尋斗の心配をよそに、笑顔でそういうと冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
      「朝からこんな時間まで、どこ行ってたんだよ!電話も繋がらないし」
      「アタシのやることに口だしするんじゃねぇよ!」
      尋斗は、強い口調で詰め寄ったが、明歩の一言で一蹴されてしまった。
      明歩はバッグから封筒を取り出すと、尋斗に差し出した。
      「今日の給料だよ。とっときな」
      尋斗は驚きと戸惑いの表情で、封筒を受け取ると中を確認した。一日の給料にしては多すぎる金額が入っている。
      「こんなに……」
      そこから先は言葉にならなかった。
      「アタシ達の生活費位は稼いでやるよ。あんたは音楽やりたいんだろ?」
      尋斗は無言で頷いたが、明歩への疑問はまだ胸の中につかえていた。
      「でも……」
      尋斗が口を開こうした時、明歩がそれを遮った。
      「風俗で働く事にしたんだよ」
      尋斗は、驚いて目を見開いた。
      「アタシには失う物なんて何もねえからさ、どうせなら稼げる方がいいだろ」
      明歩はヤケ気味に言うとハイライトに火を点けた。 尋斗は何を言っても無駄なことは十分承知なので、言葉はかけずに明歩の隣に腰を下ろした。そして二人分の缶ビールを開けた。
      「風俗ってSMクラブ?」
      尋斗は恐る恐る聞いてみた。まさかとは思うが、明歩なら女王様としてやりかねないと思ったのだ。
      「デリヘルだよっ!」
      明歩は、一瞬尋斗を睨みつけ、言葉とともに頭をはたいた。
      「体には気をつけろよ」
      「分かってる」
      尋斗が苦笑いしながら言うと明歩は笑顔で答えた。 明歩はいつもは酔い潰れるまで飲むのだが、慣れない仕事での疲れからか、すぐに眠ってしまった。
      テーブルに俯せになって眠る明歩を横にしてやり布団をかけてやった。
      そっと明歩の顔を覗き込む。少女の面影の残る可愛い寝顔だ。
      普段の酔っ払って悪魔のように振る舞う女とは、とても思えない。
      時折、悪い夢でも見ているのか唸されている。その度に頭を撫でてやると、また穏やかな寝顔に戻る。
      この日、明歩を傍らに尋斗は明け方まで飲んだ。

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