けいⅠさんとモバ友になろう!
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- 2010/5/17 13:13
- 残すもの
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- 小学生の頃、共働きだった親が迎えに来るまでほぼ毎日、じいちゃんばあちゃんの家に世話になっていた。
ただただやさしかった。
船大工をしてたじいちゃんの作業場で、おもちゃの木の船をいっしょにつくった。
ウニ漁では多くもないウニを摘み食いさせてくれた。
ばあちゃんの揚げる唐揚げを超える味に僕は未だ出会っていない。
そんな故郷に三年ぶりに帰省した。
五月十三日、じいちゃんが他界したからだ。
享年九十二
大往生だと思いたい。
通夜、葬儀とちっぽけなプライドか恥ずかしさか、涙を我慢していた僕。
帰りぎわ、ばあちゃんに「もう帰るからね」あいさつすると、もう一人でもあるけない身体を引きずり、部屋へ連れていかれた。
箪笥から現金書留をだすとなかには数枚の一万円札。当然断る僕に、どうしてもあげたいんだと涙声。
僕は一枚受け取り、「あとは次来たときにね」と言った。
孫九人、曾孫五人のなかで、いまだ行くたびに渡そうとするのは僕と姉にだけ。
「嫁さん連れてくるまで、じいちゃんには待っててもらうから。ばあちゃん頑張るからね」
ちゃんと返事をすることができなかった。
声を出すことができなかった。
涙がでた。
じいちゃんは戦争経験者で南支那に派兵されていた。が、息子である親父にも誰にも、当時のことはまったく話さなかったらしい。
よほど思い出したくないことを経験したのだろうと想像に難しくはない。
じいちゃんはそんな悲しい記憶を自分のなかに封じ、残されたばあちゃんだけを心残りに、家族に見守られ逝った。
ばあちゃん、またお盆には帰るから。
- 小学生の頃、共働きだった親が迎えに来るまでほぼ毎日、じいちゃんばあちゃんの家に世話になっていた。