白瀧 進さんとモバ友になろう!
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- 2010/2/14 17:07
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- 自分は幽霊だ、
と言う少女に出会ったのは××××ほど前のことだった。
私が彼女に名を問うと、
彼女は
「名前はありません」
と答えた。
「名前がないなら、幽霊なのです。あなたも同じでしょう」
そう言って少女は笑った。
そうだった。
私も幽霊だったのだ。
幽霊と会話できる存在がいるとしたら、
その存在も幽霊なのである。
今の私のように。
「それでは行きましょう」
彼女が言うので、
私もついていく。
少女の足取りは軽く、
まるで生きているように見えた。
どこへ行くのかと尋ねた私に、
少女は足を止めて振り向いた。
「どこへでも行くことはできます。あなたの行きたい場所はどこですか?」
私はしばらく考え込んだ。
私はどこに行こうとしていたのだろう。
ここはどこだろう。
なぜ私はここにいるのだろう。
ただ立ちつくす私は、
少女の暗い瞳を見つめるしかなかった。
「××××へ行こうと思っていたのではないですか?」
解答を出したのは少女だった。
その言葉を聞いてようやく、
私は自分の役割を知った。
そうだ。私はそこに行こうとしていたのだ。
どうして忘れていたのだろう。
こんなに重要な事柄を、
私が生きて存在するその意義を。
忘れてはいけないことだったはずなのに。
「では、もういいですね」
少女は嬉しそうに微笑んだ。
私は頷いて、
彼女に感謝の言葉を述べた。
「さようなら」
少女は消えて、
私は残された。
彼女は彼女の場所へと戻ったのだろう。
私が私の場所へ戻ろうとしているように。
空から白いものが落ちてきた。
たくさんの、小さな、
不安定な、水の結晶。
それらは地表に落ちて消えゆく。
時空に溢れている奇蹟の一つだった。
この世界には奇蹟がありふれている。
私はずっと立ち止まっていた。
時間の経過は意味をなさなくなっていた。
綿を連ねるような奇蹟は後から後から降り続く。
これを私の名前としよう。
そう思い、
思ったことで私は幽霊でなくなった。
- 自分は幽霊だ、