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- 2010/6/4 0:18
- ヒヨドリよ安らかに
【ハードボイルド編】
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- チュンチュン
「朝だ」
俺は今朝もスズメの囀り
で目覚めた
鍛え抜かれた腹筋を使いベッドから飛び起きカーテンを引いた
「晴れだ」
真夏の朝日と見間違う日差しが俺の褐色に焼けた大胸筋に突き刺さる
軽やかに身支度を済ませ傷は勿論、埃一つも付いていない愛しの新車のエンジンを掛けた
通い慣れた道だ
坂道を上がると左右畑で風が吹き抜ける俺のお気に入りの場所に差し掛かった
今はツバメも飛び回っている癒やしの道だ
<バン>
「イタッ」
思わず俺は叫んだ
車の運転席側側面に衝撃が
「石か」
「ボールか」
はたまた
「銃弾」
俺は車を走らせながらバックミラーを見た
道の真ん中に鳥らしき物体が
俺は瞬時に状況を把握し前後車が来てない事を確認すると
車を止めギヤをバックに入れてスーパーバックで数百メートル走らせた
「俺は鳥と縁があるな」(古い日記参照)
俺は一人つぶやきながら車を降りた
鳥はヒヨドリらしい
息はしていた
だが俺が持ち上げても暴れる素振りもしない
前の畑に置いておこうと思った
それが野鳥の自然界の摂理だろうと
「ごめんな」
と話し掛け畑に置こうとした
するとアリがヒヨドリの身体、俺の腕にも這いずり上がってきた
俺はどうしてもヒヨドリをこのまま一人にしておけなかった
俺とヒヨドリは車に戻った
タオルの上にヒヨドリを置いて愛車を会社へ走らせた
会社に着きヒヨドリを見たらタオルに血が付いていた口からだ
内臓をやられているのだろうか
俺はダンボールにヒヨドリを入れた
そして仕事を開始した
数十分後様子を見に行ったら息をしていないみたいだった
「可哀想な事したな」
その一言しか俺にはヒヨドリに掛けてやる言葉が見つからなかった
その後何度も見に行ったが奇跡は起きていなかった
夕方、会社の片隅に埋葬した
今もヒヨドリにとってどの選択が良かったのか考えている
答えはいつ出るか分からない
今、俺に出来る事はこんな可愛いヒヨドリが今朝まで生きていた事を多くの人にこの日記を通して知ってもらう事と
ヒヨドリの冥福を祈る事だ
ヒヨドリよ安らかに
【ハードボイルド編】完
- チュンチュン