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- 2010/3/24 21:31
- 魔法使いの喫茶店[三]猫と戦車
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- 一点の光すらない真っ暗な空間。当然、そんな場所は自然界には有り得なく、そこは屋内だと分かる。
「本当にこんな街に居るのかしらね……。」
紛れもなく女性の声、溜息混じりに漏らした疑問符。
「さぁ?」
答えるのは男性。低くもなく高くもない、ふとすれば忘れそうなありふれた声色。
「しかし、彼の思い付き(予想)は統計学的に見るなら、三回に一回は当たります。」
あくまでも穏やかに淡々と男は語る。
「だからってね、最後のカードが極東の、こんなありふれた街にあるなんて信じられる?」
女が声を荒げて問いかける。どうやら、そのペースに呑まれるのが気に入らないらしい。
「信じられません。」
きっぱりと言い切る男。
瞬間、何かが暗闇を翔んだ。
「痛っ。何するんですか?」
ガラスが割れるような音と男の軽い悲鳴と叱責。
「にしても、この戦力はなんなのよ。猫一匹捕まえるのに戦車二台も投入する軍隊なんてあんまり無いわよ。」
それを無視して呟く女。男は漏れる溜息を隠さずに、余すことなく吐き出した上で口を開く。
「猫の大きさがわからないのですから、これ位が丁度良いのでは?どうします、猫がキングコング並に大きかったら。戦車じゃあ潰されてしまうかもしれません。」
「貴方が言うと笑えないわね。」
女が鼻で笑いながら呟く。
「経験者は語るですよ?まぁ、猫と蛸じゃあ規格が違いますが。」
「洒落にならないわ。」
男がぼそりと呟くのに女は溜息を交えて相槌を打つ。
「あ……時間だわ。出掛けてくる。」
「毎日御苦労様ですね。アルバイトでもしてるんですか?」
「まぁ、そんな所。」
「うちで働けば………」
「無理。貴方んとこでメイドやるくらいなら……ホームレスやるわ。」
他愛もない会話、男の提案をあっさり躱し女の気配が消える。
「ふふ、相変わらず手厳しいですね。」
微笑が伺える呟きと共に鳴り響くフィンガースナップ。暗闇に呑まれていた室内に明かりが灯る。
- 一点の光すらない真っ暗な空間。当然、そんな場所は自然界には有り得なく、そこは屋内だと分かる。