35歳無職DTさんとモバ友になろう!
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- 2008/4/15 10:32
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- 「おい、まだかよ?」
俺は、嫁の背中に向かって言った。
どうして女という奴は支度に時間が掛かるのだろう。
「もうすぐ済むわ。そんなに急ぐことないでしょ。…ほら勇ちゃん、バタバタしないの!」
確かに嫁の言うとおりだが、せっかちは俺の性分だから仕方がない。
今年も後わずか。世間は慌ただしさに包まれていた。
俺は洋服のポケットからタバコを取りだし火をつけた。
「いきなりで、お父さんとお母さんびっくりしないかな?」
「なあに、孫の顔を見たらニコニコ顔になるさ」
俺は傍らで横になっている息子を眺めて言った。
「お待たせ。いいわよ。…あら?」
「ん、どうした?」
「あなた、ここ、ここ」
嫁が首元を指さすので、触ってみた。
「あっ、忘れてた」
「せっかちな上にそそっかしいんだから。こっち向いて」
「あなた…愛してるわ」
嫁は俺の首回りを整えながら独り言のように言った。
「何だよいきなり」
「いいじゃない、夫婦なんだから」
嫁は下を向いたままだったが、照れているようだ。
「そうか…、俺も愛してるよ」
こんなにはっきり言ったのは何年ぶりだろう。
少し気恥ずかしかったが、気分は悪くない。
俺は嫁の手を握った。
「じゃあ、行くか」
「ええ」
俺は足元の台を蹴った。
- 「おい、まだかよ?」