月姫倶楽部さんとモバ友になろう!
日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
-
- 2009/6/25 0:14
- 靴を落とした人達
-
- コメント(7)
- 閲覧(37)
-
-
雨上がりの水溜まりに、逃げた魚が泳いでいます。
そもそもこの魚は、グリルで焼かれタレを塗られ食卓に上がる運命でした。
「あ…雨が止んだ」
ふと、私がキッチンから窓の外を眺めたら、湿っぽい空気の中を電気ウナギが泳いでいたのです。魚は電気に引き寄せられるようにすり抜け、私もあわてて後を追いました。
さてさて逃げた魚は?
水溜まりに飛び込んだのです。私は菜箸を離すのも忘れていため、それで簡易式釣竿を作りました。釣竿を投げ入れると水溜まりの横に腰掛けました。
「何が釣れるのですか?」
尋ねたのは野良猫でした。どこからやって来たのか、魚の匂いに釣られた猫は髭をピンッと張り鼻をヒクヒクさせています。
「今晩のオカズよ」
「美味しそうな匂いがしますね」
「まだ食べられないよ。この魚はシッカリ火を通せば皮まで芳ばしく戴けるよ」
「へぇ」
猫は釣竿の先をジッと見ます。
「あっ」
釣れたのは電気ウナギでも魚でもなく、汚れた靴でした。猫はとてもガッカリして猫背をさらに丸めました。
「浮き足だった人達が靴をよく落とすのじゃ。」
後ろからそう言ったのは電気ウナギです。
「今の時季は天候が不安定だからのう、不安定なのは心も一緒じゃよ。我々の中には自ら感電してしまう者も居るのじゃ」
私はその時、遠くの街で落雷の音を聞いたのです。