日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
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- 2009/7/3 17:46
- 無理に穴に入れないで
写メ
付き。
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- 悲しくて、悲しくて、しかたがないときは、チクワさんにお願いしなさい。
チクワさんがその悲しみを持っていってくれるから。
チクワさんが自らの穴にその悲しみを詰めて、遠くへ持っていってくれるから。
夕方、三丁目のタバコ屋の角を曲がったところで、チクワさんは呼び止められた。
「チクワさん、悪いんだけどこの悲しみ持ってってちょうだい」
八百屋の奥さんだった。
「あいよ。毎度。えーとじゃあ、ひーふーみーっと、悲しみ三つですね。
23円になりやす」
「あらっ、チクワさんとこも値上げしたの。なんでも軒並み値上げね」
「あいすいやせん。このところの石油高騰の余波なんでやんす」
チクワさんは深々と頭を下げた。
「いいのよっ、チクワさんがそんなに謝んなくても。悪いのはみんな、ユガンダ資本主義のせいなんだから」
八百屋の奥さんからの悲しみ三つを、自らの穴に詰め、チクワさんはまた歩きだした。
四丁目の布団屋の角でまた呼び止められた。
「チクワさん!悲しみ一つ落ちたわよ!」
魚屋の奥さんだった。
「すいやせん。あんまり大量の悲しみを詰め込むと、尻の穴から出てくるんですよ。もーやんなっちゃう」
「こんな時代だから、チクワさんの仕事も大繁盛ね」
「おかげさまで。あいすいやせん」
一日の仕事を終え、チクワさんは家に帰ってきた。
風呂上がり、
缶ビールを飲む。
ビールの苦みが喉に心地イイ。
二本目を開けた。
たとえ、この喜びのためだけに生きていたとしても、それはそれでイイ、とチクワさんはなんとなく思っていた。
「コロンッ」
さっき入れたばかりの悲しみが一つ、尻の穴からまた落ちた。
悲しみは透き通ったイイ音がした。
おわり。
- 悲しくて、悲しくて、しかたがないときは、チクワさんにお願いしなさい。