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- 2011/2/6 20:43
- ラーメン逃避行
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- 本物のUFOが見たい。彼はそう言いたかったのだろうか。
「時間は未来から今へと流れているんだよ」と応用器用くんが、いつもよりも抑揚のない声音で釘を刺した。恐らくその釘の先端は彼が思っている以上の深度で、ぼくに張り巡らされている痛覚を刺激しているだろう。そしてそんなぼくは釘を包み込むものがヌカになっていなければいいと考えているのだ。いや、実のところ膝を折り頭を垂れて祈っている。釘を抱き込むものが、柔らかさを持ち頑強で萌芽の予兆が感じれる土壌であるようにと。
一過性で終わらない刺激はない。外部刺激からの運動は内在する器官に働く。幸運にも背中を押して貰ったならば自分で歩かなくてはならない。背中を見てもらえない人もいる。励ますよりも叱って欲しいと願うのは甘えである。甘えを享受する前に辛酸を舐めていないからだ。応用器用くんはぼくがそう逃げているのを見越した上で鋭い釘を打ち込んだ。釘はずくずくと奥に進んでいく。無遠慮に、当たり前のように同情心を持っていない。
温まったエンジンがもたらす振動によって、ぼくの身体は細やかに時折峻烈に揺れる。砂利道を走っているからだろうか。背中から力を抜けば二度三度浮く程に。ぼくはハンドルを握る指にしっかりと力を込める。耳元ではUFOが飛んでいる。ゆらゆらと、だが辛うじてUFOらしい軌道を保ったまま飛んでいる。視界にぎりぎり入らない慎重さは同時に、ここぞとばかりにぼくを責め立てる。もう家の駐車場は過ぎてしまったけれど、UFOがここから飛び去るまで車を走らせよう。そのくらいの寄り道はいいと思う。たまには通り過ぎて、戻って眠りにつこう。枕に宿っている本は開けないと知っていても。
「キャトられたいなあ」
応用器用くんはぼくにそう漏らしていた。彼は多分UFOを知らない。ぼくも知って欲しくない。そしてぼくは渇いた嫉妬に身を任せようとする。肌に慣れた温度だ。
けれど、干からびたトカゲのようなそれは初めてぼくを受け入れなかった。
- 本物のUFOが見たい。彼はそう言いたかったのだろうか。