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- 2012/3/29 19:23
- どくしょのかんそーぶんてきなもの
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- 【バレエ・メカニック/津原泰水】
複雑な都市とはどこか神経を連想させます。思考と電子のネットワークともいうべき東京は、失われた人間の大脳を代替しうるのか。そしてそれが可能となったとき、目の前に見える世界はどのような変貌を遂げるのか。バレエ・メカニック、貝殻と僧侶、午前の幽霊、全三章のサイバーミステリ。
これはちょっと凄いよ。躍動を表現するというより、文章そのものが躍動しているかの如きダイナミズム。美術の知識に明るくないものだから、そっち方面の比喩には追いつけない分もあったけど、美しい文体でぐいぐい読ませます。ホモセクシャルな描写についてはジェンダーSFで小馴れてるつもりでおりましたが、これほど濃いものを喰らったのは初めてでついたじろいじゃったり(゚ω゚) 特筆すべき点としては、躍るような文章・性描写と、ある種の幻想文学的な世界観の表現、さらに二人称から三人称一元までを鮮やかに使い分ける多奏主観が挙げられます。
三章で突然ニューロマンサーやダイヤモンドエイジもかくやといったハードなサイバーパンクが展開して度肝を抜かれるものの、それでいて前二章と決して乖離しない巧みな構成には頭が下がります。そして、三章ともラストの余韻が素晴らしい!
想像力の文学とはよく言ったもの。大好物です(`・ω・´)
【カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー】
読み切った! 誤訳の件はいずれ新潮の原卓也訳を読み直す予定なので許してたも(´д`)
ドストエフスキーは帝政ロシアの衰退と変革の歴史と一体の人生を歩んだ人で、時代を反映したどこか影のある物語や人物描写が強く印象に残る作家です。 著者本人の自伝的側面を帯びたこの「影」の部分が、ドストエフスキーが本懐とする神学思想サスペンスと掛け合わさったときに発揮する効果は恐るべきもので、それらが最高の形で結実したのが本作カラマーゾフの兄弟と言えるのではないでしょうか。
中盤でイワンが語る大審問官と、終盤の裁判で見せたカテリーナの鬼気迫る心情の吐露には目を見張りました。前者は、凡百の宗教観とは一線を画す思想で、現代にも通用する人間の内的精神主幹のメタファーが凝集しています。後者は、カテリーナがそのプライドの高さゆえミーチャに病的に依存していく一方、自分を献身的に支えてくれるイワンにも惹かれていき、極限まで追い詰められた結果ついに! という場面。圧倒的です。
- 【バレエ・メカニック/津原泰水】