かいさんの日記

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- 2025/7/19 20:27
- 俺の生姜蕎麦
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- 池波正太郎【剣客商売】に金子伊太朗なる浪人が登場する。伊太朗は色白で切長の目を持つ美青年。彼に好意を持つ女性は数多いて、惚れた女達はお持ち帰りされる…が、みんな残酷な方法で命を落とす。伊太朗は性癖が歪んだ猟奇殺人魔だったのだ。
  
  その原因は出生にある。母親はわずかな金で体を売り、行きずりの相手で伊太朗を孕った。「お前を水に流そうとしたが、とうとう産まれちまった」と母に聞かされて育った伊太朗は浮浪者同然の姿で家を飛び出して、剣術の道へ進む…世の女性達を憎んだまま。
  
  伊太朗は蕎麦が好きだった。故郷・信州では生姜の絞り汁と少量の味噌が入ったつゆで蕎麦を食べる。その蕎麦を食べている時だけは、伊太朗は普通の男だった。
  
  前置きが長くなった。今日の俺は昼めしを食い過ぎて、あまり食欲が無い。なので伊太朗が食べていた蕎麦を再現してみた。小説によると「薬味は無い」との事なので俺もそうしたが、半端に残ったおろし生姜を更に蕎麦に乗せた。
  
  食ってみたらうまかった。生姜の香りが意外に蕎麦と合う。そして辛味が癖になりそうだ。めんつゆに混ざった味噌が、良い意味で田舎臭い味を出してくれている。
  
  そう言えば主役の秋山小太郎は同じものを食べて「妙に、うまい」と言った。俺もそう思う。