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    • 2012/11/18 0:50
    • スリジエセンター1991
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    • ──ジュノ。


      幾重にも反芻するその声と共に、俺はあの広く高い背中を思い出す。
      時には美化され、決して忘れることはなくとも、
      思い出とは劣化するものだと思っていたし、事実その通りだろう。
      けれど俺が彼という人物の輪郭を思い描く時、それはあまりにも鮮明に、鮮やかに、色をなくすことなく俺の中にあり続ける。どれだけ時を重ねようと、彼の存在が変わることはないのだ。
      …ならば“彼”とは何であろう?
      思い出ともなり得ない彼という存在は、確かにもうこの世のどこからも姿を消してしまったはずなのに。
      俺の中に確かに住まう、“ここ”にいる彼──天城先生は、なんという存在なのだろうか。

      昔、誰かが彼を指した言葉。
      ──神様にでも、本当になってしまったとでもいうのか?よりにもよって、無神論者の男が。
      …いや、あるいはその通りなのかもしれない。
      彼は今でも、俺の中に住まう神様なのかもしれない。
      …なんてね。


      あと少し、手を伸ばせば届きそうな背中に、何度となく俺は手を伸ばしかけて。
      そのたび彼は──天城先生は振り返る。かつての佐伯外科に属していた者ならが多くが見慣れただろう、シニカルな笑みではなく、浅黒く堀の深い顔に屈託のない笑みを浮かべて。無邪気な男として笑って見せる。


      …本当に、敵わないなぁ。


      俺は心の内で問いかけ続ける。
      それは“神様”へなのか、俺自身へなのかはわからないけれど。

      人が死ぬ時とは、一体何のことを言うのだろう?
      それを医者である俺が言うのかと、多くの人は嘲け笑うだろう。
      医学的な根拠なんて、それこそ医学書をパラリとでも捲ったことのある者なら簡単に答えられるだろう。
      でも、そうではないんだ。
      人が、本当に死んでしまうのは…最後の時を迎えるのは。
      きっと、誰かの心から追い出された時。人が彼を忘れてしまった時だ。

      純粋な人間の意思が、人から人へと受け継がれていくのならば、その礎となった人々がこの世から完璧に消えることはない。生き続けるのだ。

      それはいつか彼が、俺に言った言葉にも繋がっているのだろう。


      ──革命とはこころに灯った松明の火だ




      「天城先生、」







      ──ジュノ。


      最も遠くて近いその場所で、再び俺を呼ぶ声が聞こえた。


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