外道神さんとモバ友になろう!
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- 2011/4/2 21:06
- 【全く】地震・5【気付かなかった】
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- 『風の吹くまま気の向くまま、行き先はお天道様に聞いてくんな』
少年が遠い昔に呼んだ世界遺産探検漫画の主人公が残した名言である。
ちょうどこの場面、主人公は野原に座っておにぎりを頬張っていた。それ程に空は晴れ渡り、そよ風は平和の音を奏でていた。
が、現実はどうだろう。強すぎる風ばかりが吹き荒れ、お天道様は雲を消し飛ばしでもしないと拝めない。
まだ天気が回復したとは言えないような灰色の空の下、少年は最寄りの駅に向かって歩いていた。
自販機のアイスでいいから食べ物が欲しかったのもあり、安全だが退屈な状況に見切りを付けたのもある。
だが、数人の客にならって停止したエスカレーターを上り、2階を歩き回っていた所を注意されて内心憤慨した事こそが、行動を起こす引き金となっていた。
何が『建物も古くなってますから無闇に彷徨かれると困ります』だ。停電すると古い建物は次々倒壊していくのか?ああ?
何度反芻しても、同じ文句が脳内を往復する。
まあいいや、駅に行けば少なくとも何かできるだろう。ついでに迎えも頼んで、俺の自転車は後日取りに行こう。
いろんな意味で、終点が眼前に迫っていた。
駅はデパート同様、どこに行くでもない人が大半を占めていた。
携帯の充電が切れていたのを思い出し、少年は改札口前の時計を見ようと人の間を縫って進んだ。
そして、やっと自分の鈍感さを恥じる事ができた。
改札機の前に薄汚れたホワイトボードが立て掛けてあったのだが、そこには今まで全く気付かなかった事実が記されていたのだ。
『2時45分頃の地震に伴い、全線運休を見合せております。ご理解とご協力、宜しくお願い致します』
時刻は4時50分。地震発生から2時間が経過していた。
加えてこの地震が生涯初の大地震である事を知ったのは、1時間後に帰宅してからである。
以来少年は、いや、俺は募金や節電を心掛けながら慎ましく生きている。
―完―
- 『風の吹くまま気の向くまま、行き先はお天道様に聞いてくんな』